鼓の調べ

古代から日本に伝わる打楽器の形状として最も古い「鼓(つづみ)」。片腕で抱えられるほど小型の太鼓で、遣隋使の帰還とともに大陸より日本に伝来したといわれていますが、縄文時代にはすでに太鼓を用いた文化は存在していたとも推測されています。

鼓は筒型、または砂時計型の胴の両側に、皮面を「緒」と呼ばれる紐を用いて張られ、緒を締めたり緩めたりしてチューニングします。この点では他の太鼓と同じですが、日本の鼓は演奏中に緒を調節して音階を変化させる、世界でも特異な演奏法で奏でる楽器です。

現代の和太鼓演奏などは、地を這うような力強い響きが特徴の鋲太鼓を主に用いますが、雅楽や能など、日本伝統音楽の中でも歴史の古いものは特に鼓を用います。

抑揚のある不思議で繊細な調べ、そして音無くしてもそこに鎮座するだけで美しい、美術工芸品としても価値の高い鼓は、演奏を耳で聞くだけでなく、目で見ることでも鑑賞できます。

今回は、日本が誇る美しい楽器の鼓について、その心地よい調べの歴史と共に紐解いてみましょう。

0 Shares:
You May Also Like
続きを読む

日本の伝統文様(矢絣、七宝、鱗)

日本の染物や織物、また蒔絵などに現れる美しい伝統文様。 前回は、市松、麻の葉、亀甲の文様を紹介し、ひとつひとつの意味をご紹介しました。 今回はいっそう幾何学的な三つの文様(矢絣、七宝、鱗)について、それぞれに込められた意…
続きを読む

津軽塗テーマの映画「バカ塗りの娘」家庭画報・編集長の千葉由希子さんと映画プロデューサー盛夏子さんのトークイベントレポート

こんにちは、工芸と心地よい暮らしを探すメディアontowaです。 第1回「暮らしの小説大賞」を受賞した「ジャパン・ディグニティ」(髙森美由紀さん著)を、主演 堀田真由さん、鶴岡慧子監督で映画化した「バカ塗りの娘」が、全国…
続きを読む

工芸の楽しみ方 その1

「工芸品」というと、敷居の高いものを連想するかもしれませんが、シンプルに「工芸品」というと、「高い技術をもって作られた、美的で用途のある品」ということ。 「有田焼」や「山中漆器」のように産地のものだけでなく、個人のものや…
続きを読む

和太鼓の響き

人類史の中でも、太鼓は最も古い楽器といわれています。ナイジェリアのヨルバ地方では言語として太鼓の音が使われていたり、シベリアではシャーマンの太鼓は魂の乗り物であるとされ、病気の治療のために用いられていたなど、世界中の文化…
切子とガラスのカップ
続きを読む

美しき日本のガラス工芸

光を反射して輝くガラスは、今や私たちの生活に欠かせないものです。昼間に室内でも明るい空間で過ごすことができるのは、光を透過するガラス窓のおかげ。また、コップやサラダボウルなど、清涼感のあるイメージのうつわも、あたりまえの…