日本のうつわ、つまり「和食器」は、食事をより美しく見せるため、色々な素材や形を用います。
漆器に陶磁器、ガラスのうつわなどの素材ごとに、保温などの機能性や、温かみや涼しさなど、見た目の印象も変化します。その様々な様相は、食事と相まってミニマルな美を作り出すでしょう。
特に、季節ごとの食事を楽しむ時が、和食器の本領発揮の時。日本には春、夏、秋、冬の四季があることはよく知られていますよね。(この四季に梅雨季、秋雨季をくわえ、六季があるとも言われています。)それぞれの気候や草花、生き物たちの様子の変化は、日本人の美意識に大きな影響を与えてきました。
また、この四季をそれぞれさらに三つに分けた「二十四節気(にじゅうしせっき)」、さらにそれらを三つに分けた「七十二候(しちじゅうにこう)」をご存知でしょうか。これらは中国から取り入れられ、「七十二候(しちじゅうにこう)」については、日本の四季に合わせて名称が改定された季節の区分です。
たとえば、「立春」は二十四節気の中の最初のひとつですが、それらの節気の一つひとつに、さらに七十二候による3つの区分があります。立春の「初侯」は「東風解凍(こちこおりをとく):東風が厚い氷を解かし始める」という季節。2番目の「次候」は「黄鶯睍睆(うぐいすなく):鶯が山里で鳴きはじめる」。最後の「末候」は「魚上氷(うおこおりをいずる):割れた氷の間から魚が飛び出る」というものです。
これ以外にも日本には、節分、彼岸、土用、八十八夜など、「雑節(ざっせつ)」と呼ばれるものもあり、今でも色々な行事が行われています。
このような日本独特の季節のうつろいは、先人の感性を豊かにし、きっと、工芸などのものづくりのためのヒントにもなったことでしょう。
それでは、今回は二十四節気・七十二候を取り入れつつ、日本の季節とぴったりな和食器について、少しずつご紹介していきます。まずはスタンダードに、季節の代表である四季を中心に見ていきましょう。