日本各地には、絵付けが華やかなもの、シンプルなもの、きめ細やかな手触りのものなど、さまざまな特徴を持つやきものがあります。
その中でも、栃木県・益子町でつくられる「益子焼」は、ぽってりとした厚みと、温かみのある質感、多彩な釉薬による独特の色合いが魅力のやきものです。
毎年、ゴールデンウィークと11月3日前後に開催される「益子陶器市」には、全国から約60万人が訪れ、長年にわたって親しまれています。
食器や茶器、美術品まで幅広く用いられている益子焼ですが、その始まりは日用品としてのうつわ作りにあります。
やがてその素朴な魅力は、「民藝品」としての価値を見いだされるようになっていきました。
この背景には、「日々の暮らしに寄り添う道具こそ、美しさを宿す」という「用の美」の思想があります。
益子焼は、そうした考えに支えられながら、実用品でありながら芸術性も備えた工芸品として、多くの人に愛されてきました。
本記事では、益子焼の歴史や特徴をたどりながら、その奥深い魅力をご紹介します。