鼓の調べ

古代から日本に伝わる打楽器の形状として最も古い「鼓(つづみ)」。片腕で抱えられるほど小型の太鼓で、遣隋使の帰還とともに大陸より日本に伝来したといわれていますが、縄文時代にはすでに太鼓を用いた文化は存在していたとも推測されています。

鼓は筒型、または砂時計型の胴の両側に、皮面を「緒」と呼ばれる紐を用いて張られ、緒を締めたり緩めたりしてチューニングします。この点では他の太鼓と同じですが、日本の鼓は演奏中に緒を調節して音階を変化させる、世界でも特異な演奏法で奏でる楽器です。

現代の和太鼓演奏などは、地を這うような力強い響きが特徴の鋲太鼓を主に用いますが、雅楽や能など、日本伝統音楽の中でも歴史の古いものは特に鼓を用います。

抑揚のある不思議で繊細な調べ、そして音無くしてもそこに鎮座するだけで美しい、美術工芸品としても価値の高い鼓は、演奏を耳で聞くだけでなく、目で見ることでも鑑賞できます。

今回は、日本が誇る美しい楽器の鼓について、その心地よい調べの歴史と共に紐解いてみましょう。

0 Shares:
You May Also Like
続きを読む

心地よい甲州印伝のある暮らし

日本を代表する工芸として、「日本の革細工」というと、ピンと来ない方もいるのではないでしょうか。 実は、日本の革細工は5世紀頃より存在していたと日本書紀に記述があります。 そして17世紀より登場した「印伝(いんでん)」と呼…
続きを読む

健康祈願と工芸

ときに、工芸品の中にはある種の「おまじない」が施されていることがあります。たとえば、新年に新しく手に入れて片目を描き、願いが叶ったときにもう片方の目を描く「だるま」も、おまじないのための工芸品ですね。 だるまは基本的に真…
続きを読む

心地よい奈良墨のある暮らし

墨という道具は、東洋の文化において、書道や絵画、さらには学問や教育の発展等、重要な役割を果たしてきました。 また、墨の持つ、表し難いような複雑な黒色と、心地の良い香りは、東洋の美学と精神性を象徴するものであり、今なお多く…
続きを読む

心地よい村上木彫堆朱のある暮らし

村上木彫堆朱(むらかみきぼりついしゅ)とは、新潟県北部の村上市で作られている伝統工芸品。漆器の中でも、彫刻の施された朱塗の作品が特徴的で、力強くも優美な美しさを誇ります。 村上市は平安時代(8~12世紀)ごろから漆の産地…
続きを読む

心地よい樺細工のある暮らし

木工、金工、陶芸など、工芸品は太古の昔から世界中で作られてきました。 人々の暮らしに中で便利であるだけではなく、美しい工芸品は暮らしに華を添えるものです。  日本では20世紀の大正期より「民藝運動」という、人々…