良質な岩石に恵まれた「石の文化」の西洋に対して、豊富な森林に恵まれた日本は「木の文化」であるといわれます。
建築や工芸において、良質な木材は私たちの生活文化の中心の素材です。
自然信仰を文化の礎とする日本には、古代から続く信仰にまつわる神秘的な場所がいくつも存在します。
中でも、ユネスコ世界文化遺産のひとつに数えられる広島県の嚴島神社は、潮の満ち引きする海上に建てられた社殿と海に浮かぶ鳥居の荘厳さに、誰もが魅了される特別な場所です。
嚴島、又の名を「安芸の宮島」と呼ばれる広島県廿日市市の島は、日本三景のひとつとしても知られています。
宮島の、原始林で覆われた瀰山(みせん)、そして鳥居の浮かぶ海の風景は、古の日本の神秘を感じさせます。
そんな「神の島」である宮島には、江戸時代後期から続く木工品が伝えられています。
今回は、宮島細工と呼ばれるその美しい木の工芸品について、歴史や魅力を掘り下げお伝えします。