芸術を支える「パトロン」について

「芸術」とは一体、何ものでしょうか。その答えは考え方によるところもありますが、大きな枠で捉えれば「人間がこれまで歩んできた歴史を体現したもの」と表すことができるかもしれません。

中でも美術や工芸には、その国や個人、時代が紡いできた技巧や哲学を「見ること、触れること、使うこと」に集中して現れています。過去の作品を振り返れば、人々がこれまでどのように生きてきたのか、その理想や現実、暮らしぶりを見て取ることができるでしょう。

芸術の担い手(アーティスト)たちは、自分たちが見聞きしたもの、感じ取ったものを各々の技術や手法により表現します。

そのような芸術活動でのみ生活していく、つまりはお金を稼ぐことが、時に困難になることも。

そこで、芸術によって紡がれてきた文化を支えるために、アーティストの才能を見込んで創作活動を支える人が求められてきました。

そのアーティストを支える人々のことを「パトロン」といいます。今回は、その「パトロン」が具体的にどのような活動をするのかをお話しいたします。

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