はにわ造形作家 鈴木恵深さんインタビュー – はにわが紡ぐ日常の物語 –

栃木の豊かな自然の中で、陶芸の魅力を小さな「はにわ」という形に昇華させた鈴木恵深さん。

手びねりで作られる3.5センチほどの小さなはにわたちは、表情や仕草にユーモアや愛らしさがあふれ、コレクターたちを魅了しています。

はにわを手に取ると、作り手である鈴木さんの暮らしや想いがひとつひとつに込められていることを感じることでしょう。

この度、那須千本松牧場オリジナルの「あげあげはにわkids」というはにわを制作された鈴木さん。

今回は、日常の暮らしと創作がどのように交わり、はにわにどのような生命が吹き込まれるのか、その秘密に迫ります。

ここからはインタビュー形式でお楽しみください。

はにわを作り始めたきっかけは何ですか?

ガチャガチャのアイテムとして、はじめは野菜の箸置きとか、なんかちょっと小さなもの作ってほしいということで、お声掛けいただいたんです。

でもそれだとつまらないなと思ってしまい、ちょっと変わったものないかなって考えた時に、私自身が土偶とかはにわが好きだったので好きなものを作ろうと。

その土偶やはにわを好きになったきかっけは?

陶芸と関わる仕事をしていたので、やっぱり土器とかそういったものの展示を見に行くことが多かったので、そこではにわとか土偶とかも結構見る機会があったんです。

そこで見ているうちに興味が湧いて、だんだん好きになっていったんですが、元々は土偶の方が好きで、はにわにはあまり興味がなくて。

ただ、ガチャガチャのカプセルの中に入れるとなった時に、はにわの方がパッとしている表情なので、かわいさがあり、そういったきっかけで、はにわを作るようになったんです。

はにわを作る際に意識していることはありますか?

意識していることは、とにかく日常の暮らしの中で、自分が目に入るものをいつも気にしています。

例えば、今日は牧場に来たから牧場だったら牛乳だよなとか、いつも常に何かしらどんなものを持ったらかわいいかな、はにわにどんなものがいいかなと、いつも意識しながら暮らしています。 

最近は、ちょっと何かをかぶせることも増えてきましたが、持たせているものも最初はちょっとしたハートとか、お花とかだったのが、だんだんと動きが出るようになってきて、例えば卓球とかのスポーツをしているとか、そういった感じになったりしてました。

ただ楽しみながら、日常で自分が好きな、例えば、焼きそばパン食べててこれを作れるかなとか思いながら暮らしていくのってすごく楽しいことなんです。

同じものが嫌なんです、飽きちゃうから笑

なので、去年のものでアイテムが一緒なものも一部あるんですけど、毎回毎回、毎月毎月、多少でも新しいもの、今のもの、自分が好きなもの、流行ってるものを取り入れて、とにかく新しいことをやっています。

今までできなかった、作れなかったものが、どんどん作れるようになっていくのは、多分そのチャレンジしながら日々作っているからかなと思いますね。

千本松牧場オリジナルはにわ(千本松牧場の牛さんと一緒に)
大きさは3.5センチくらいと伺いました。このはにわを作ることの難しさはどういったところでしょうか?

手びねりで作っているんですけど、お団子から木の棒に刺して作っていくんです。 

私のこだわりは、型は使わないところで、自分で一つ一つ手作りで作っていくよう心がけています。

一つ一つが全部自分で最後まで作ってくので、形もそれぞれ、表情も違う。

それも、自分の手作りの味わいだなと思っていますが、それが一番大変かも知れないです。

数が1ヶ月に1000個とか作るので大変で、肩がバキバキになります笑

制作されているはにわがコレクターズアイテムになっていると伺いました。

そうなんです。

1回揃え始めると、皆さんコレクターになっていくようで、例えば奥様が好きで、最初は奥様が集めてたんだけど、結局一緒に見てるうちに旦那様が集めはじめて、はまっちゃったとか、娘さんの影響でとか。

小さいお子さんから、お年寄りの方まで本当にいろいろな方が集めてくださっていますね。

このはにわを通して伝えたいメッセージはどういったことでしょうか?

私たちがこの世を去った先の時代に、令和の時代に栃木県でこんなのが流行っていたんだ、なにこれーみたいに笑ってもらいたいですね。

そして、はにわを愛してほしいなという思いで作っています。

千本松牧場オリジナルはにわ(ふれあい動物広場の動物と一緒に)
今回、千本松牧場とコラボしたオリジナルはにわも作られていますが、これはどのようにアイデアが生まれたのでしょうか?

私の娘がまだ2歳なのですが、今回のお声がけをいただく1、2ヶ月前に、こちらに遊びに来てたんです。

ウサギの散歩が好きで、奥のふれあい動物広場にも行っていたので、ウサギ、ヤギ、羊がいるっていうのもわかってたので、そういう体験からインスピレーションを得て、こんなのがあったらかわいいなと。

実は、お話をいただく前にイメージしていました。

ソフトクリームを食べる娘を見てると口のまわりが真っ白になってて笑

そこからアイスがぺちゃってついちゃってるはにわとかも作ったり。真面目に食べてるはにわもあるけど、なんかおっちょこちょいな、はにわもいるんです。

 こういった感じで、日常の暮らしと「はにわ」をコラボさせて作っています。

千本松牧場オリジナルはにわ(千本松牧場のソフトクリームを抱えて)
私たちは、読者に「心地よい暮らし」を提案しています。鈴木さんが普段の暮らしを心地よくするために大切にしていること、心がけていることがあれば教えてください。

私は散歩が大好きで、私が住んでるところはかなり山奥なのですが、とにかく自然を感じながら生活すると多分、何か色々なものを得られると思っていて。

自然の中で暮らしながら、自分も自然体でいたいっていう思いが強いです。あとは、読書と車の中で歌を歌うことと、猫をなでることですかね笑

でもやはり、私は散歩が一番かな。

自然の中で散歩することが一番すっきりしますね。

もともとお住まいが東京だったとのことですが、栃木に引っ越されたらのは、自然が好きだったからでしょうか?

そういうわけではなく、益子焼の産地だったので移り住んだのですが、でも自然の中で物を作った方が絶対いいと思っています。

ただ鳥の声が聞こえて、花や植物を鑑賞したり、季節の移り変わる変化を感じるのがすごく好きかもしれないですね。

どんどんそういうのことが好きになってて、本当にいいですよ、ここの自然は。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

編集後記

今回のインタビューを通じて、鈴木恵深さんがはにわ作りに込める熱意と、日常の何気ない風景から生まれる創作の豊かさを感じることができました。

はにわという古代の象徴が、現代の暮らしの中で新しい形で息づいているギャップに驚きと楽しさがありました。

自然に囲まれた暮らしの中から得られるインスピレーションや、手作りならではの温かさが詰まった作品たち。

はにわの可愛らしい表情やユーモアに満ちた仕草には、思わず微笑んでしまう魅力があります。

鈴木さんのはにわには、どれも手作りならではの温もりが宿り、それも多くのコレクターを惹きつける理由の一つなのでしょう。

その一つ一つが、私たちに「心地よい暮らし」とは何かを教えてくれるようです。

また、鈴木さんのお話から印象的だったのは、はにわを作ることがご自身の楽しみであり、日々の暮らしそのものと深く結びついているということ。

家族との時間や散歩の中で感じたことが、形となり、はにわに命を吹き込む。

そんな日常と創作の循環の中にある心地よさが、作品を通じて私たちにも伝わってくるようでした。

読者の皆さんも、鈴木さんの「はにわ」に触れることで、自分自身の日常の中にある「好き」や「楽しい」と感じる瞬間に目を向けてみてはいかがでしょうか。

意外な発見が、心地よい暮らしをさらに豊かにしてくれるかもしれません。

今回の取材をきっかけに、私たちも日常の小さな出来事や身の回りの自然に、もっと目を向けてみたくなりました。

「好き」を形にする鈴木さんの姿勢に触れたことで、自分の好きなものに誇りを持ち、それを大切にすることの素晴らしさを再認識できた気がします。

鈴木恵深さんの今後のさらなるご活躍が楽しみです。

以下、敬称略

プロフィール
はにわ造形作家 鈴木恵深
2006年東京都より移住、栃木県の益子町にて陶芸活動中。
大人気の「はにわ」シリーズは、季節やオケージョンごとのオリジナルで、これまでに2万個以上販売。ひとつひとつ心を込めて手作りしている。

取材協力
那須千本松牧場
https://www.senbonmatsu.com/

イベント会場
那須千本松牧場「にぎわい広場」
2024年10月リニューアルした那須千本松牧場のレストランと売店の間に位置する「にぎわい広場」は、家族連れや友人同士が集い、楽しめる開放的なスペース。
屋根付きの広場は、牧場ならではの自然の風景を感じながら、リラックスできる場所として、栃木県の生産者の取り組みや、また来たい、新たな発見と出会える牧場として、牧場と親和性のあるアーティストによるお客さま参加型のイベントを定期的に実施し、地域とお客さまをつなげ、新しい牧場の価値を創造していきます。

那須千本松牧場のリニューアル取材記事はこちら
https://ontowa.com/senbonmatsu-info-4/

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