現代、私たちが普段使っている食器は陶磁器のものが主流ですが、明治時代以前は木で作られた「木椀」がメジャーでした。日本は国土の70%もの地域が森林に恵まれた「木の文化」の国であり、縄文時代の古代から現代に至るまで、木を用いた工芸や建築、また製紙業が盛んです。
昭和以降は金属やコンクリート、プラスチックなどの素材が、かつての木工製品および建築に代わるようになりましたが、近年では「木」の魅力を改めて見直すような動きが見られるようになってきました。
たとえば、木椀は陶磁器のうつわに比べて保温性、断熱性が高く、熱い食事をよそっても片手で軽く持ち上げることができます。落としても割れない丈夫さもあり、漆を塗れば100年以上も質を保つ耐久性も誇ります。
また、木は他の素材と比べて軽く、加工もしやすい上、木の種類によっては硬さや抗菌性など様々な性質を持ち、作るものによってその特性を生かすことで、道具や建築としての質を上げることも可能です。
それに、木目の美しさなど、見た目の良さも再評価されてきています。このように、木製品の魅力や利便性は非常に高く、エコの観点からみても重用されるべき素材なのです。
今回は、その「木の魅力」について掘り下げてみましょう。まずは、私たちに最も身近な木である針葉樹を中心に、道具に使われる木材の種類についてご紹介します。