金を叩いて伸ばし、1万分の1ミリの薄さまでに仕上げる金箔である金沢箔は、神社や仏閣、仏像など宗教美術の装飾や、蒔絵のような工芸品、そして日本画など、日本の芸術品においてなくてはならないもの。金は非常に錆びにくいため、永遠の輝きを放つものとして、特に光や荘厳さの表現において重要な素材です。
現在、日本の金箔のほぼ100%が石川県の金沢で作られています。金沢は、仏壇や漆器、九谷焼など、多くの伝統工芸品の産地でもあり、これらの工芸品に金箔が用いられています。
およそ400年の歴史を持つ伝統的な職人技があり、特に「縁付金箔」と呼ばれるこの伝統的な金箔は、現在の日本における文化財の修復や伝統工芸に欠かせない存在です。
江戸時代終期までは東京でも「江戸箔」と呼ばれた金箔がつくられていましたが、金沢の水の質の良さや湿潤な気候など、箔打ちに適した環境と職人の技術の高さにより、明治時代には金沢の金箔が全国のシェアを独占しました。そこでなぜ箔打ちに水の質が関係するのかといえば、箔打ちに必要な「打ち紙」と呼ばれる和紙作りには良質な水が決め手となるからです。
伝統的な箔打ちに使われる和紙にもさまざまな種類があり、職人は箔打ちのための和紙の加工も行うのですが、その紙の質が金箔の質を決めるといわれています。
今回は金沢箔の歴史や興味深い製法について、お話しします。