金を叩いて伸ばし、1万分の1ミリの薄さまでに仕上げる金箔は、神社や仏閣、仏像など宗教美術の装飾や、蒔絵のような工芸品、そして日本画など、日本の芸術品においてなくてはならないもの。金は非常に錆びにくいため、永遠の輝きを放つものとして、特に光や荘厳さの表現において重要な素材です。
現在、日本の金箔の98%が、仏壇や漆器、九谷焼など、多くの伝統工芸品の産地でもある石川県の金沢で作られています。大正期に開発された機械打ちの製法と、およそ四百年続く伝統的な職人による手打ちの手法があり、特に「縁付金箔」と呼ばれる伝統的な金箔は、現在の日本の遺産の修復や伝統工芸には欠かせません。
江戸時代終期までは東京でも「江戸箔」と呼ばれた金箔がつくられていましたが、金沢の水の質の良さや湿潤な気候など、箔打ちに適した環境と職人の技術の高さにより、明治時代には金沢の金箔が全国のシェアを独占しました。そこでなぜ箔打ちに水の質が関係するのかといえば、箔打ちに必要な「打ち紙」と呼ばれる和紙作りには良質な水が決め手となるからです。
伝統的な箔打ちに使われる和紙にもさまざまな種類があり、職人は箔打ちのための和紙の加工も行うのですが、その紙の質が金箔の質を決めるといわれています。
今回は金沢箔の歴史や興味深い製法について、お話しします。