ホウライ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役会長兼会長執行役員CEO:寺本敏之)が運営する那須千本松牧場(以下、千本松牧場)は、2024年10月25日、40年ぶりにレストランと牧場の売店をリニューアルしました。
千本松牧場は、明治時代の元勲であり、第4代と第6代の内閣総理大臣、そして長く大蔵大臣を務めた松方正義によって、1893年に大農具を導入し欧米式の大規模農場を開いたのがはじまりです。
寺本会長によると、この地域には明治の元勲たちが牧場を構えることが多く、欧米式の牧場経営への憧れが背景にあったのではないかとのことですが、脈々とその経営が続き現存するのは、この千本松牧場だけ。
「自然との共生」という、当時としては革新的な理念を掲げ、今日まで100年以上に続く伝統と、自然の調和を大切にしながら、循環型の酪農を続けてきました。
歴史と伝統が息づく貴重な場所でもあります。
この度、この千本松牧場がレストランと牧場売店のリニューアルオープンをするタイミングで、現地にて取材させていただきましたので、じっくりと紹介させていただきます。
コンテンツの内容
千本松牧場の誇るべき持続可能な循環型酪農
「自由との共生」という考え方の一番大きなポイントは、なんといっても「循環型酪農」です。
循環型酪農とは、牛が出した牛ふんを肥料にして、敷地にまいて土をつくり、その土で牧草、トウモロコシなどを育てる、そしてそれを牛に食べさせてと、ぐるぐると循環する仕組みをいいます。
この取り組みは多くの牧場が実施していますが、こういった牧草やトウモロコシ、これは主食で粗飼料といいますが、千本松牧場は、この自給率がなんと約9割に近いとのこと。
この割合は、北海道並みに高い自給比率であり、本州の他の牧場だと大体自給率は3割程度であるとのことでしたので、本州ではかなり稀有な存在です。
首都圏に近いエリアでここまでのレベルで実施している牧場は珍しいそうです。
牛は主食だけで育つのではなく、配合飼料(濃厚飼料)という、おかずみたいなものも、食べる必要があり、これは外から購入しているそうですが、これも「遺伝子組み換えではないもの」を選んで食べさせているとのことでした。
寺本会長は、「お客様の食の安心、安全を長きに渡り気遣い、汗を流してきた牧場です。」と語っていましたが、食の美味しさと安全性への想いが、牧場でのさまざまな取り組みからも、しっかりと伝わってきます。
そして今後、この「循環型酪農」のさらなる高度化に取り組んでいくとのこと。
牧場内を案内していただき見学したところ、その敷地面積はなんと825ヘクタール(東京ドーム176個分)におよび、約500頭の乳牛が飼育されているそのスケールの大きさに圧倒されました。
施設リニューアルのコンセプト
この千本松牧場が、40年ぶりにレストランおよび売店をリニューアルしました。
施設コンセプトは【牧場感を満喫できる施設へ】
「親しみやすいモダン×カントリー」をデザインの基調とし、 那須塩原市や栃木県の象徴的なモチーフや親子向けの遊び場、授乳室などを完備し、誰でも訪れやすい空間を提供しています。
新たなレストランは、牧場の広大な自然を一望できる開放的な空間で、訪れるすべての方に特別な食体験を提供できようにリニューアル。
テラス席やパラソル席等約400席を備え、従来の8人掛け1テーブルを、4人掛け席仕様に変え、よりリラックスしたカジュアルな雰囲気をご提供するとともに、テラス席も従来より1.5倍に増やし、自然の景観を楽しみながら食事を楽しめるように。
そして、ペット同伴でお食事いただけるパラソル席も完備されているのも嬉しいポイントです。
新たな牧場売店は、自社・地域の魅力発信拠点として、自社製品や地元の特産品をはじめ、乳製品・精肉・加工製品・菓子・ 雑貨約450種類を幅広く取り揃えた売店としてリニューアル。
売店は、牧場内工房で手作りで生産される新鮮な乳製品やスイーツをはじめ、栃木県の生産者の商品、地元の特産品を取り揃え、訪れる方々に那須千本松牧場でしか味わえないオリジナルの味や地域の豊かな味わいとともに、カジュアルで上質なお買い物が楽しめる空間です。
盛りだくさんの施設リニューアルのポイント
両施設では、自然環境を守りつつ、人と自然が共生できるサステナブルな施設づくりに力を入れていました。
随所に環境に配慮した取り組みや、千本松牧場ならではのアイデンティティを盛り込んだモニュメント、 壁材・スポット、そして牧場内で伐採された木材での什器等、盛りだくさんの考慮が散りばめられています。
1 太陽光発電の活用
持続可能なエネルギー利用の一環として、レストラン・売店の屋根に太陽光パネル135.72kWを設置し、自家発電を行います。これにより、牧場内のレストランや売店で使用する電力の一部を賄い、環境負荷の低減に貢献します。
2 温泉水の利用
敷地内で湧き出る千本松温泉の温泉水を活用し、レストランや売店の床暖房や温水給湯、旧レストラン・売店の解体後のランドスケープに設置される予定のお子様が楽しんでいただける親水施設の温水に利用し、お客様に快適な環境を提供するとともに、エネルギーの効率的な利用を実現しています。
3 伐採木の利用
環境への配慮から森林管理を行う中で生じた伐採木を活用し、サステナブルな資源循環を実現しています。
伐採された木材の一部は、売店のディスプレイに 再利用され、自然の温もりと調和をもたらしています。
4 牧草を壁材活用し、メッセージ発信
千本松牧場で自分たちで育てた“牧草”を漆喰に練りこんだ独自の壁材を、レストラン・売店に採用。牧場のアイデンティティをメッセージとして表現するとともに、自然素材ならではの優しい風合いが空間に温かみを与えています。
5 掘り出した石をモニュメントに
千本松牧場では、那須特有の扇状地の形成過程でその土壌には多くの石が含まれています。循環型酪農の「土づくり」では、これを手作業で取り除くのですが、そのような土壌に含まれる石の一部を活用し、レストランの入り口にユニークなモニュメントとして設置していました。
6 那須疎水の活用
明治時代に開発された日本三大疎水の一つで、那須の歴史的な水利システムである那須疎水を有効に活用し、環境に配慮した循環型牧場運営を推進。主に牧場内の散水に活用しているそうです。
焼肉スタイルの新感覚ハンバーグをレストランで愉しむ
レストランでは、1964年から続く伝統のジンギスカンに新たな鉄板を導入するとともに、新たな看板メニューとして、千本松牧場で育った乳牛を100%使用した、焼肉スタイルが新感覚の「千本松牧場牛100%ちぎりハンバーグ」 が登場しました。
「千本松牧場牛100%ちぎりハンバーグ」
千本松牧場で育てた牛肉を100%使用した生ハンバーグです。
目の前の鉄板で一口サイズにカットし、ご自身で焼いてお召し上がりいただく、焼肉スタイルの新感覚ハンバーグ。
焼きたてのジューシーな美味しさと、6種類のタレ(チミチュリソース・トマトソース・わさび・塩・ごま油・ポン酢)で多彩な味わいが楽しめます。
「千本松牧場牛100%ちぎりハンバーグ」は、しっかりとした歯応えで、油っぽくない旨味の詰まった味わい。6種類のタレで味わいも変わるので、どれが好みか試してみるのも楽しいです。
その他、従来より人気のジンギスカン、牛サロイン焼肉セット、那須御養卵を使ったオムライス、その他お子さま向けのメニューなど自家製の乳製品や地元の新鮮な食材を使った料理が揃っています。
栃木県の味覚を堪能できるメニューが用意され、 年齢や性別に関わらず、幅広い世代の皆さまに利用いただけるように配慮されていました。
新商品を含めたオリジナルのスイーツや乳製品が新牧場売店で購入可能に!
新商品のオリジナルスイーツや乳製品は、おっと思わせる食感やそれぞれ特徴のある味わいがあり、一口食べるたびに驚きと笑顔がありました。
この中でも、特にontowaが実際に食してみての推しのスイーツは、「PURE MILK プリン」、「牧場手づくりミルクチーズケーキ(キャラメル岩塩)」、そして「千本松牧場96撰アイスクリーム」 です。
これは、読者の皆さまにも、ぜひ食べてみていただきたいスイーツです。
オリジナル新商品(スイーツ)「PURE MILK プリン」
牧場内の工房で丁寧に手作りしたミルクプリンは、余計なものは一切加えず、牛乳本来の甘さと香りが生きた正にピュアミルクそのもの。コクのある優しくなめらかな口当たりです。
オリジナル新商品(スイーツ)「牧場手づくりミルクチーズケーキ(キャラメル岩塩)」
自社で飼育している約500頭の乳牛から絞って直ぐの新鮮な牛乳を使用し、牧場内の菓子工房で手づくりしています。
チーズケーキに使用できる最大量、全体の15%に牛乳を使った、新感覚のミルクチーズケーキです。香ばしく、ほろ苦いキャラメルソースがミルクの甘みと溶けあう味わいが特徴で、別添えのフォユティーヌ(フレーク)でサクサクとした食感の変化も楽しめます。
オリジナル商品(スイーツ)「千本松牧場96撰アイスクリーム」
千本松牧場で飼育する約500頭の乳牛のうち96頭から搾った特に乳質の優れた生乳を使用しています。搾乳は、条件の良い冬の数日間に限定して行い、搾乳後24時間以内にアイスを仕込むことで、搾りたての新鮮な風味と旨味を凝縮した生産数限定の商品です。シリアルナンバーで品質が管理されたアイスは、「さっぱりしつつもコクがあり、生乳の甘さや香りを楽しめる」のが特徴。本商品は、この夏の三越伊勢丹のお中元ギフトにも採用され、リニューアルオープンを契機に牧場売店での販売をスタート。
オリジナル新商品(乳製品)「焼いて食べる牧場ミルクチーズ」
レストランで人気のチーズが、お客さまの声を受けてついに売店でも購入可能になりました。 地中海のハロウミチーズをモチーフに、千本松牧場独自の製法で仕上げたこのチーズは、自社牧場の新鮮なミルクを使用し、酸味のない自然な風味が楽しめます。焼いても溶けない“外はカリッと、中はモキュッと!”食感を楽しむことができ、ミルクの優しい甘さが口いっぱいに広がります。
千本松牧場発のアート&カルチャーは要チェック
新しい売店とレストランの間に位置する「にぎわい広場」は、家族連れや友人同士が集い、楽しめる開放的なスペースで、アートとカルチャーの発信の場として活用されます。
那須塩原市および栃木県の生産者との協業マルシェや、牧場と親和性があるアーティスト・作家による顧客参加型ワークショップなど、千本松牧場からアート&カルチャーの発信を通じて、牧場と地域を結ぶ新しい価値創造を実施していくとのこと。
地域の生産者とコラボレーションしたイベントやアート&カルチャーの体験イベントなど、「また来たい」と思わせる魅力的な企画の数々に期待が高まります。
グランドオープンは2025年4月
今回のリニューアルに続き、2024年12⽉中には、旧レストランと売店の解体⼯事が完了予定です。
そして、2025年4⽉中旬に、さらに広がる新しいランドスケープと共にグランドオープンを予定していると発表がありました。
新しいランドスケープの場所には、温泉⽔を利⽤した、お客様の憩いの場も作る予定とのことです。
持続可能な牧場運営と新たな価値提供を⽬指す、千本松牧場の進化は続きます。
千本松牧場について
- 自然と100年以上共生し続ける中、自社畑の牧草・コーンにより乳牛を育て、牧場内の牧草を食べた牛の排泄物はたい肥原料の一部とし、再び土づくり、牧草づくりへと循環させる「持続可能な循環型酪農」に取り組み、環境負荷削減、食の安全、社会的価値の創造に対しひとつの回答を示すことを目標としています。
- フリーストール牛舎で、歩き回れる環境を提供し、搾乳もストレスを抑えて行い、本州では最大規模の約500頭の乳牛(ホルスタイン)を育てています。
- 400ヘクタールに及ぶ広大な森林を計画的に管理・育成することで、酪農による発生量の約2/3に相当するメタンガスを吸収している計算になり、持続可能で環境負荷の少ないカーボンニュートラルな牧場を目指しています。
- 1日の生乳生産量は、約7~9トン。生乳の生産から乳製品の加工、さらに観光牧場としての活用まで、一貫した生産ラインを持つことで、品質管理と食のトレーサビリティを向上させ、日本の総人口の35%が集中する首都圏へ乳製品等を供給する牧場として、都府県酪農の新たなモデルの実現を目指します。
- 自社で大切に育てた牛から採れる生乳は、「さっぱりしているのにコクがある」唯一無二の味わいが特徴です。
- 100年以上の歴史を持ち、鳥獣保護区に指定された広大で自然豊かな環境の下、「PURE MILK FARM」をコンセプトに、レストラン・売店・ソフトクリーム・アミューズメント・動物とのふれあい・乗馬から温泉まで、季節のイベントを楽しめる牧場です。
編集後記
取材を通じて、とても強く心に残ったのは、ここで働く社員、スタッフの方々の「心地よさ」でした。
取材当日お会いした社員、スタッフの皆さんは、とても生き生きとしていて、熱い情熱を持って働くその姿に深く感銘を受けました。
皆さんの輝く眼差しと熱心な説明を聞いていると、そのエネルギーがこちらにも自然と伝わってくるのです。
千本松牧場は、東日本大震災や新型コロナウイルスの影響による観光需要の低迷により、2011年から12期連続で赤字が続いていました。
しかし、2023年9月には、リブランディングプロジェクトやコスト削減の取り組みによって、13期ぶりに黒字転換を果たしたのです。
この黒字化に向けた取り組みは、「土から育てる、きれいなミルク」という理念に基づき、牧場の原点である持続可能な循環型酪農の強みを様々な施策に反映させたものです。
単なる環境配慮のアピールではなく、牧場の長きにわたり続く伝統を現代に合わせて見える形にした、根底からの本質的な取り組みです。
今、千本松牧場の活動は、まぶしいほどの魅力を放っています。
そして、この実現には寺本会長をはじめとする社員、スタッフ、そして多くの関係者の情熱が欠かせなかったに違いありません。
この熱量とそこから湧き出る温かい幸福感は、きっと訪れる利用者の皆さまにも届くに違いありません。
この牧場をさらに良くし、訪れる人々にとって心地よい場所にしようという想いは、さらにあふれ広がっていくことでしょう。
入場料も駐車場料金も無料です。皆さんも美味しい料理やこだわりのスイーツを堪能し、千本松牧場での心地よい時間をゆっくりと満喫してみてください。
来年2025年春のグランドオープンを控え、これからの展開も楽しみです。